坪田信貴著:「好きなことが見つからない君へ」読書感想
【はじめに】
私には、中学生の息子がいます。勉強、部活、友人、ゲーム、漫画、スマホといろいろ楽しんでいる様子。そんな子供を見て、「やりたい職業」が見つかれば、最短距離で「幸せ」につながるんじゃないかな?と思っていました。進路の話が出る時も、夫婦で、「やりたい職業が見つかったら、一生けん命勉強するのに」という話が出ました。そう言いながら「本当にやりたいことが見つかるって、簡単じゃないよな」自分だって、大人になっても、もがいてあがいて、それでもやりたいことは、変化し続けているのです。もちろん、社会もどんどん変化していくから、自分で脱皮(精神・知識・技術)しないと、会社もずっと存在するわけではないし、社会から置いきぼりになります。安穏としていては化石になってしまいます。今という時代についていき、自分を変化させ、自分を磨く以外に方法はありません。ずっと懐メロを聞いている人は、20年前の価値観から抜け出せていない。コンフォートゾーンから1歩も出ていないのです。時代の流れに追いついていない人が、「こうしたら成功するはずだ」と言えるわけがありません。自分で草莽崛起(そうもうくっき)して、維新を起こしていかないと、かつて、欧米列強に植民地にされたアジア諸国にように侵略(搾取)されるような人生(自分の人生を生きているようで生きていない)が待っているような気がします。
こんな時、私は必ず「decade」という単語を思い返します。decade=10年。そう10年という単位を示す英単語。世の中が変わっていくので、10年ごと(今はもっとスピードが速い)に脱皮(変化)して、次の「world」で生きていくために、新たな知識や技術を身につけないと、と思っています。そんな小さな思いから、自分のためにも「 好きなことが見つからない君へ 」のページをめくりました。
【やりたいことなんて見つからなくて当たり前】
やりたいことさえ見つかりさえすれば、やる気は出てくるはず…でも、やりたいことって、そんなにすぐ見つかるのでしょうか?若い時期には、経験が少なく「手持ちのカード」は少ないから、やりたいことが見つからなくて当たり前。発想を変えて「自分がやりたいこと」より「人が求めていること」の方が成功しやすいので、そこにアンテナを張ってみるのもオススメです。さらに「やりたいことがある」という人と一緒に何かやっていくうち、いろいろな経験値がついていって、自分の世界も広がっていきます。まずは、手持ちのカードを増やしていく。とにかく経験を増やしましょう。注意すべきは「どうせ自分には無理」という固定概念に縛られないこと。短期的な視点だけで物事を捉えないことが重要です。
【学校の勉強の中で】
私は、高校の勉強は苦手でしたが、専門学校の勉強は、睡眠をしっかり取って、授業をよく聞いて、主体的に楽しく取り組めました。先生が試験に出るぞと言ったところはSDマーク(試験に出るマーク)を付ける。過去問、友達同士で教えあう、先生に聞くなどすれば、ほぼ問題なく乗り切れました。
勉強する中で成功体験を持てるとその後の人生は有利です。若い時期は、勉強や部活、社会活動の中で「成功体験」を積み重ね、やりたいことをやりましょう。人生に無駄なことなんて、一つもありません。すぐに結果は出なくても、その経験(成功も挫折も、失敗も何気ない日々も)は、マグマのようにあなたの地下深くに眠り、必ず爆発する(役に立つ)時がくるのです。「〇〇をやりたい、〇〇になりたい」この瞬間の自分の思いを無駄にしてはいけません。自分の感性を信じることが大切。正しいベクトルは、「できる→勉強する→やる気が出る→やりたいことが見つかる」であって「やりたいことが見つかる→やる気が出る→勉強する→できる」ではないのです。
とにかく、若い時期に大切なのは、どんなことでもまずはやってみて、小さなことでもいいから「成長した」という体験を積み重ねていくことです。それが上達してくると、さらに「もっとやりたい」という気持ちが高まり、「やる気」が出てきて、連鎖的に成果に結びつくのです。
今の学校(教育産業)は、アクティブラーニングやPCも導入されていますが、詰め込み学習も多いようです。今の子どもたちは、AI時代を生き抜いていかねばならないので、0を1に出来る「発信力(アウトプット力)」を生み出せるようなアプローチが必要な気がします。どうしても、日本は昭和の成功(高度成長・バブル)を忘れられなかったり、同調圧力が高かったりします。それを突破できる「OUTPUT力」を身につけるようなエッセンスを家庭や教育の場で導入していけたらなと思います。「学ぶことの楽しさ・素晴らしさ」を感じられれば、勉強が好きになるはずですよね。
【正しい方向に努力する方法】
どんな人でも、何かを始めて継続していけば、やったらやった分だけ成長していきます。さらに経験した分だけ経験値も増えていきます。人は「やれば伸びる」のです。要は「やるか、やらないか」というだけの話。To be or not to be, that is the question.(このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ)ハムレット(シェークスピア)。出来る範囲でやればいいのです。その中で、「師匠を探す(憧れ、こんな風に生きてみたい)」「師匠を完コピ(モデリング)する」と成長が加速するようです。
【アイデンティティの確立】
まずは、目の前の一人を感動させる。あなた自身が目の前の人との関係性をきちんと築いていくことが大切なのです。まさに「網の目のように延々と続いていくネットワーク」が、あなた自身の「アイデンティティ」なのです。
そして時々、人間関係の「メンテナンス(振り返り)」も、次に挙げたどれかでやってみて下さい。
①Meta:メタ(一階層上の)認知→「動画で見る自分をイメージする」。(FACEBOOKがMeta∞という社名に変わったのは、偶然ではないはず)
②20答法→私にまつわる文を20個書く。
③ジョハリの窓→自分の全体像を見て分析。

失敗は「成功のタネ」、ゼロヒャク思考で考えるから失敗が怖くなのです。恋愛も一か八か(ゼロヒャク)で告るのではなく、デートを重ねて、60点以上で「いけそう」と思ったら告る。たくさん試行錯誤して、自分の当たりパターンを見つけることが重要だと堀江貴文は言っています。100のうち当たりは、1つか2つ。そうして試行錯誤して当たりを摑み、「目の前の人を感動させる人」が「成功する人」だそうです。
【一日一日の積み重ね】
行き詰ったら、「リフレーミング」でポジティブに捉えましょう。物事をそれまでとは違う枠組みで捉え直してみると良いそうです。俯瞰したり、ミクロ視点でみたり、他人の目はあまり気にせず「知のベース」を貯めましょう。若い時の「失敗」はネタになるので、自分の感性を信じて行動しよう。無駄なこともあるかもしれませんが、無駄の中に大切な宝物が心の奥にそっと置かれている場合もあります。数十年後になってその宝物を開ける瞬間が来る場合も往々にしてあると思います。なので、1日1日を大切に積み重ねて、自分が惹かれるものに心を寄せて、「自分の感性を磨くこと」が大切だと、私は思います。
太宰治著「正義と微笑」より
「 勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」(「正義と微笑」より「パンドラの匣」新潮文庫収録)
太宰治の言っているように、人生を慈しみましょう。また過ごす環境で人は変わるのですから、うまくいかなければ環境を変えればいいのです。また一流の人に会うことやその言葉に触れることこそ、あなたの可能性を開く大きなきっかけになるのです。
【親について】
「親の言うことはそのまま聞くな!」親がすべきことは、子供が「できる→やる気が出る」を積み重ね、やりたいことを見つけ、努力しているときに「お前には無理だ」と否定しないことです。子供の言葉を信じて、信念を持って、温かく見守ることです。子供の才能を開花させるためには、それしかないと思います。
「悩むこと」=君が、自分の力で自分の人生を生きようと懸命に生きている証拠です。「悩んでいること、それ自体が宝物、自分の感性を信じましょう!」悩む時期=成長の時期なのです。
【おわりに】
いまやりたいことが見つからないという君へ。それは、何の問題もありません。しかし、手をこまねいている場合でもありません。私のオススメは日記をつけるということ。日記やSNSに記録すると「やりたいこと」「やりたかったこと」が集まります。小さな心ときめく瞬間を拾い集めてください。一つひとつの積み重ねの上にしか「価値」は生まれません。「誰かのために」自分の全力を一つひとつに尽くしてみてください。きっと素晴らしい未来が開けます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。